
1.単元の概要
本単元は通常小単元として区切ることが多い「北アメリカ州」と「南アメリカ州」をまとめ,中単元として構成していることを特色とする。南北アメリカの共通点と相違点を明らかにしていく活動を通して,それぞれの地域的特色について多面的多角的に施行することをねらいとする。
単元を貫く課題は「北アメリカ州と南アメリカ州を「アメリカ州」とまとめることは適切か」である。
北アメリカ州と南アメリカ州が「アメリカ大陸」からスタートしたことを伝え,面倒くさいから1つにまとめちゃえばいいじゃんという小学1年生の「面戸 久世さん」に答えてみようと導入から始める。
北アメリカ州と南アメリカ州の自然環境(2),農業(2),工業(2),民族・言語・文化(1),そして南北アメリカの環境問題(1)と8時間で実施した。
2.単元の目標
(1)地理的な見方考え方を働かせて,南北アメリカの地域的特色を理解する。
(2)南北アメリカの共通点と相違点を明らかにする活動を通して,1つの州としてまとめることが適切か否かについて多面的多角的に考察し,判断する。
(3)南北アメリカの共通点と相違点についての考察を踏まえ,その地域的特色について主体的に考えようとしている。
3.アメリカはもともと南アメリカだけを指す
アメリカという言葉の語源は,探検家アメリゴ・ヴェスプッチ(Amerigo Vespucci)の名前に由来する。

1492年、コロンブスがヨーロッパから西へ航海して現在のアメリカ大陸に到達したが,当初この大陸は「アジア」と考えられていた。
その後,探検家のアメリゴ・ヴェスプッチがこの新しい大陸について調査・報告し,この地がアジアとは異なる新大陸であるとする詳細な報告を行った。
1507年,ドイツの地理学者・地図製作者マルティン・ヴァルトゼーミュラーは,この報告をもとに『世界地理入門』(宇宙誌入門ともいう)を出版した。ここでは,新しい大陸を「発見」者アメリゴ(Amerigo)からとり,当時の地名の命名ルールにのっとり,女性形の「America(アメリカ)」と呼ぶべきと提唱したのである。

ちなみに,この主張自体は,同書の編者の一人のもので,ヴァルトゼーミュラー自身は新大陸南部の地図に「アメリカ」と書き込んだだけである*1。
ここからも分かるように,「アメリカ」は当初「南アメリカ」のみについてであり,大陸全体の正式名は「インディアス大陸」であった。しかし,「アメリカ」が瞬く間に普及し,ヨーロッパでは北米大陸もアメリカと言われるようになった。
アメリカの由来を遡ると,アメリカがもともとは南アメリカを指すことが,アメリカ≠アメリカ合衆国という固定観念を揺さぶってくる。
4.米州機構について

汎アメリカという考え方を知っているだろうか。南北アメリカでまとまることで,政治・経済などの面で協力し、平和と繁栄を築こうという考えで,それを表す組織がある。
それが米州機構(OAS:Organization of American States)だ。
これは,アメリカ大陸の国々が政治・経済・安全保障・人権などについて協力するための国際機関である。
加盟国数は現在、南北アメリカとカリブ海地域の35か国で,アメリカ大陸のほぼすべての独立国が参加している。そして日本を含む59カ国とヨーロッパ連合が常任オブザーバーの資格を持っており,わが日本も関係している組織なのだ。
OASを理解するうえで重要なのが、アメリカ合衆国と中南米諸国との関係だ。
OASの前身となる米州協力の仕組みは、19世紀末から発展してきたが,アメリカ合衆国の政治的・経済的影響力が非常に大きかったため、中南米諸国との間では「アメリカの介入をどう考えるか」という問題が強く存在した。
そのため、OASの歴史は単純に「アメリカ大陸の国々が仲良く協力してきた歴史」ではなく、アメリカ合衆国の強い影響力と、中南米諸国の主権・自主性との関係を考える歴史でもある。
南北アメリカでまとまることで,政治・経済などの面で協力し、平和と繁栄を築こうという汎アメリカ主義という考え方を表した組織であると言える。
5.まとめ
単元を貫く課題「北アメリカ州と南アメリカ州を「アメリカ州」とまとめることは適切か」に対して,おそらく生徒の多くは,「適切ではない」という結論を出すだろう。北アメリカ州はアメリカ合衆国に代表される先進国的なイメージ,アラスカやカナダに代表される冷帯のイメージが強くある。一方で,南アメリカは熱帯雨林に覆われた熱帯のイメージや第一次産業中心の発展途上国的なイメージを強く持つ。
おそらくその意味では,本単元もその固定観念を強化するものになるだろう。それはそれでいいのだが,ヨーロッパの植民地として「発見」された過去や北極と熱帯雨林と対極の地で起きている環境破壊など,共通点もある。そうした点にふれながら,EUみたいにまとまったら面白いんじゃないか?と考える生徒がいても面白いと思った。
6.参考文献
米州機構(Organization of American States:OAS)|外務省
*1:篠原愛人,2012,『アメリゴ=ヴェスプッチ』清水書院.p.178