ゴリラの社会科

授業で扱ったことをあげていきます。

フィードロットと北海道の牧草地――北アメリカ州の農業(中学地理)

1.フィードロットと北海道の牧草地

雄武町にて筆者撮影

ある晴れた日の午後。北海道の牛さんに声をかけると,4頭がこちらを向いてくれた。

放牧された牛さんが,青々とした牧草をムシャムシャと食べている。風情ある北海道の風景である。

 

一方でこちらはアメリカの牛さんである。

カルフォルニア大学デービス校HP 
https://clear.ucdavis.edu/explainers/how-do-us-cattle-ranchers-put-food-our-table

単純比較はできないんですが,なんか雰囲気が違いますね。。。

 

 

2.フィードロットとは

下の写真は「フィードロット(Feed lot)」と言われる肉用牛の多頭数集団肥育場の様子である。

フィードロットとは,土地を柵で囲い,多数の牛を集約し,穀物主体の濃厚飼料を与えることで効率的に太らせた肉牛を生産するシステムである。

 

かなり古い資料だが,斎藤功,矢ケ崎典隆,1998,「ハイプレーンズにおけるフィードロットの展開と牛肉加工業の垂直的統合 カンザス州南西部を中心にして」『地学雑誌』107(5),674-694を参考にその概要をまとめてみた。

 

フィードロットは,一般的に300㎏の牛を4カ月肥育して,約570㎏にして出荷するサイクルをもつ。そのため,肉牛には毎日平均9㎏の飼料を給餌することになるが,給餌は三段階に分けて進められる。

 

フィードロットにやってきた牛(これを素牛という)には,約1週間繊維質の多い飼料を給餌し,その後2カ月くらい穀物と粗飼料(主に牧草)を半々にブレンドした飼料を,最後に濃厚飼料の多いものを給餌して出荷する。

濃厚飼料とは聞きなれない言葉だが,トウモロコシや大豆などタンパク質や炭水化物,脂肪などの栄養素を多く含むものである。

 

つまり,理論的には1万頭を肥育できるフィードロットでは,年間3万頭の肉牛を販売することができることになる。言い換えれば,フィードロットとは,肉牛を短期間で高速肥育するコスパを追及した牛肉生産場である。

 

フィードロットが成り立つためには,安価で豊富な飼料と豊富な水,安い牛肉を大量に消費する都市,そして生産と消費をつなぐ流通が必要となる。

フィードロットを支えたのは,同じ時期に普及したセンターピボット灌漑の発達である。

http://rokugocha.blog.fc2.com/blog-entry-86.html

大量生産されたの穀物が牛の短期間での生育を可能にしたのだ。

 

またフィードロットは,当初農家の混合農業として始まったが,1970年代以降,次第に企業型の大規模経営へと変わった。今では世界有数の穀物メジャーが,穀物の生産から牛肉の加工・販売までを手掛ける垂直的統合を進めている。1つのフィードロットで数十万頭をも肥育するほどの巨大化が進んだのであった。

 

3.北アメリカ州の農業

さて,フィードロットの説明もそこそこに,北アメリカ州の農業についての授業案を提示していく。

 

1 アメリカ人は朝昼晩何を食べているのでしょうか。

ハンバーガーとハンバーガーとハンバーガー!

・最近は寿司やラーメンとかの日本食や韓国料理も人気らしいよ

 

2 朝はオレンジジュースとシリアルが普通で,昼はホットドッグとか適当に済ませることが多いみたいです。

もちろん,ハンバーガーも大好きですが,夕食はBBQを家族で楽しんだり,ピザや中国料理など外食に頼ることが多いそうですね。

 

3 シリアルの原料を知っていますか?

・トウモロコシ

 

4 ハンバーガーの原材料は?

・小麦(バンズ)

・ピクルスやケチャップ,マスタード

・牛肉や豚肉のパティ

 

5 それぞれの生産量と輸出量に関する資料からどんなことが分かりますか?

・小麦の生産量や輸出量が世界4位

・とうもろこしと大豆は生産量も輸出量も世界1位

・牛肉は生産量は1位だけど,輸出量は3位に下がっている。

⇒なぜ牛肉は順位が下がるのかな?

・国内で消費されているから?

 

7 自国で消費する分をまかなうだけではなく,輸出する余裕があるくらい大量生産していることがわかりますね。どうやってこんなにも大量生産しているのかな?

 

8 課題提示「アメリカはどうやって肉や穀物を大量生産しているのか」

 

このあとは,北海道とアメリカの牛の育て方の違いを写真を見せて気づかせ,概念的知識の獲得にむかいたい。

ここでは前時で獲得してるはずの自然環境と関連付けたい。

 

適地適作,地下水をくみ上げた農地化,広い土地と大型の機械を使った大規模農業,それを可能にする穀物メジャーアグリビジネスなどを白地図に書き込みながら学習したい。

 

4.牛肉食から鶏肉食へ

さて,そんな世界規模のアメリカ牛肉産業ですが,2000年代前半から,安価な値段,食文化の多様性,健康志向などを背景に,鶏肉の消費量が牛肉の消費量を上回った。こうした消費動向に影響され,現在,牛肉の生産量は,鶏肉,豚肉についで第3位である。

 

アメリカの食文化の変化が日本とどう結びつくのか,まとめの活動で聞いてみても面白いかもしれませんね。

 

参考文献

用語集:フィードロット feed lot:フィードロット - 財団法人日本食肉消費総合センター

ハイプレーンズにおけるフィードロットの展開と牛肉加工業の垂直的統合

農林水産省「米国における牛肉市場概観・流通実態」

エサの種類

高等学校 地理・地図資料(web号)

斎藤功他2,2003,「カリフォルニア州インペリアルバレーにおけるフィードロットの展開と地域連関」『筑波大学人文地理学研究』27,171-202.

 

 

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