すべてが凍りつく闇のなか――角幡唯介『極夜行』
中学生は「白夜(びゃくや)」をよく知っている。「北極や南極などで見られる一日中太陽が沈まない現象をなんというか?」と聞くと,めちゃくちゃ元気に「白夜!」と答えてくれる。
教科書の太字だからか,それとも謎解き冒険バラエティ番組のせいだろうか。白夜は人気が高い。
一方で「じゃあ逆に,半年にわたって太陽が姿を見せない現象は?」と聞くとあまり元気がない。「極夜(きょくや)といいます」といっても,「へえ」という反応が多い。極夜は人気がない。
そんな極夜に,単独かつ犬ぞりで挑んだ男がいた。冒険家の角幡唯介だ。
彼の目的はすべてが凍りつく闇のなかで極地を目ざし,本物の太陽を見ることだ。
謎解き冒険バラエティではなく,本物の「冒険」に踏み出そう。