女性の敗戦日記について
敗戦日記としては,こんな参考文献リストができるだろうか。
高見順『敗戦日記』
エーリッヒ・ケストナー『終戦日記』
清沢洌『暗黒日記』
ここに女性の敗戦日記をつけ足すと
吉沢久子『吉沢久子、27歳の空襲日記』
男性と女性それぞれ三冊の王道参考文献といったところだろうか。
女性の三冊の日記については,雑誌『図書』2022年7月号,斎藤真理子「三人の女性の『敗戦日記』」で紹介されている。
生活を切り盛りする女性たちが,暮らしの中で戦争を生き抜いた記録である。
本稿を読んで気になったのは,戦争中といえど,食料は「あるところにはある」ということだった。
野上弥生子の日記だ。
甘いもの好きな夫のために作る揚げまんじゅう,お汁粉,故郷の大分臼杵に伝わる茶台寿司などなど,料理名だけ見ていると戦時の感じが薄い。一九四五年四月三十日には,大分臼杵の実家(フンドーキン醤油という大企業)から,味噌や醤油,塩などがどっさり送られてきている。野菜は自分でも作るし,近所からお裾分けがある。米も豊富らしく,白米をたくさん炊いた後は,傷まないうちに焼きおにぎりやお弁当にして人にあげたり。五月六日の日記にはそれについて「しかし白米の御飯をもてやまして,他人に食べて貰ふといふ事は,今はよそでは出来ないゼイタクさであらう」などと書いてある。当時の食糧事情を考えれば,「あるところにはあるものだ」といわれてしまうだろう。(斎藤真理子 2022: 61)
こうした食糧事情を知ることは,子どもたちにとって,教科書が示す一様に貧しい食うや食わずの戦中像を一変させる強さをもっている。ネタとしては面白いので,どこかで使ってみたくなる。
参考文献リスト