ゴリラの社会科

授業で扱ったことをあげていきます。

世界の18歳がしていることーー18歳成年年齢引下げ

 

法務省HP

18歳選挙権に始まり,日本でも成年年齢が18歳に引き下げられた。

政府広報オンラインは「18歳から”大人”に!成年年齢引下げで変わること,変わらないこと」と題して,18歳になったらできること,20歳にならないとできないことについて,広報活動をしている。

www.gov-online.go.jp

 

18歳の可能性

2022年12月,アメリカのアーカンソー州・アール市に18歳の市長が誕生した。新市長・スミスは,人口1800人の同市で若者を中心に235票を集めて当選した。スミスの政策は,町に食料品店を誘致すること,町を美しくすること,交通と治安を改善することを公約に掲げて立候補した。彼はアメリカ史上最も若い黒人市長となるようである。

 

mainichi.jp

 

私は20歳との境目などつけず,18歳の成年年齢に完全移行で良いと思うが,日本では成年年齢引下げに伴う危険性の回避が大きな議論となった。

調べてみたところ,法務省の調査結果がまとめられていた。

 

https://www.moj.go.jp/content/000012471.pdf

いくつか気になったのは,成年年齢引下げの要因が「戦争」ということだ。

 

アメリカの場合,州によって異なるが,成年年齢引下げは1970年代に進められた。以下は法務省のレポートからの引用である。

成年年齢の引下げは,選挙権年齢が21歳から18歳に引き下げられたことに関連している。1965年から1973年までの間,何百万人ものアメリカ兵が徴兵または志願によりベトナムに赴いた。1960年代,多くの米国民の中で,徴兵年齢が18歳であるにもかかわらず,選挙権年齢が21歳であるのは不公正である,徴兵されるのに十分な年齢である者は軍隊の在り方を含め政治に意見を述べることが認められるべきだとの議論がなされ,「戦うのに十分な年齢,投票するのに十分な年齢(old enough to fight, old enough to vote)がキャッチフレーズとされた。このような状況の中,連邦政府憲法を改正し,選挙権年齢を引き下げた。この社会的な流れを受けて,成年年齢の引下げが行われた(ワシントンDC,ニューヨーク,ヒューストン)

 

続いてイスラエルは,建国とともに成年年齢は18歳である。

ほとんどのイスラエル人が軍隊に入隊する年齢であるため。

 

オーストラリア,そしてニュージーランドアメリカ同様,ベトナム戦争が契機となっている。

1960年代から70年代にかけて,社会は大きな変革期を迎えており,若い人の多くがベトナム戦争に派兵され,多くの人命が失われ,社会全体が自分たちの声を政治に反映させたいという機運で盛り上がっていたところ,連邦及び各州において,Law Reform Commissionと呼ばれる裁判官,学者などから構成される機関が設置され,そこで成年年齢,刑事責任年齢,飲酒・喫煙年齢などが議論された。

 

引下げの背景としては,1960年代に入り,大学教育など高等教育の普及や社会の変化にともない,選挙権年齢を18歳に引き下げるべきであるという強い国民からの意見があり,また,当時18歳以上の男子はベトナム戦争に派兵されていたが,戦争で戦うのに十分なほど成熟しているといえるのであれば,選挙に行き政府を選ぶのに十分なほど成熟しているといえるのではないかといった議論もされた。

 

イスラエルをのぞく,ベトナム戦争組は,18歳で戦争に行く⇒戦争に行くなら選挙権よこせ⇒選挙権獲得⇒成年年齢引下げというステップをふんでいる。

 

またベトナム戦争は若者の権利獲得運動に火をつけたことが伝わってくる。多くの国で成年年齢引下げは1960年代から1970年代にかけて行われているからだ。

 

日本はこの成年年齢引下げのプロセスのなかで,「戦争に行く」が抜けている。本当に抜けたままでいてくれたらよいが。

 

 

 

参考文献

唐木清志,2023,「18歳の可能性を切り拓く社会科教育のあり方をどう考えるか」『社会科教育』2023年3月号(767): 120-121.

法務省「諸外国における成年年齢等の調査結果」(最終アクセス2023年2月11日)

https://www.moj.go.jp/content/000012471.pdf

毎小ニュース:国際 アメリカに18歳黒人市長誕生へ | 毎日新聞