ゴリラの社会科

授業で扱ったことをあげていきます。

牙を取られるゾウ,ゴミをあさるゾウ

ナショナルジオグラフィック』2023年5月号の特集は,「私たちが知らないゾウの世界」である。

 

 アフリカ・サバンナに暮らす陸上最大の哺乳類,アフリカゾウ。その数が激減している。1日百頭以上のアフリカゾウが人の手によって殺されているのだ。ゾウを殺して手に入れるのは肉ではない。高価で取引されるのはゾウの牙-「象牙」だ。

 

 密猟者たちは,毒矢で瀕死の重傷を負わせ,チェーンソーのような工具を使って,ゾウの顔面をえぐり取り,その巨大な牙を奪い去っていく。しかも,ゾウがまだ生きてるうちに。生きたままえぐり取るのは,死後硬直によりゾウの皮膚はチェーンソーの歯が通らないほど固くなるからだ。
 

 残酷かつ違法な方法で刈り取られた象牙は,急速な経済成長を遂げる中国に違法で輸出され,莫大な利益をもたらす。そして中国同様に象牙が取引されているのが,ここ日本だ。象牙は装飾品や「印鑑」としてわれわれの身近に存在している。この密猟組織を追跡した三浦英之は,その詳細を『牙――アフリカゾウの「密猟組織」を追って』(小学館 2019)で明らかにしている。

 
 19世紀の初めには,アフリカ大陸におよそ2600万頭のゾウがいたと推定されている。その後生息数は減少の一途をたどり,アフリカに41万頭,アジアに5万頭ほどが残されているにすぎない。


 とりわけ急速な経済発展が進むアジアでは,ゾウと人間の不幸な接触が相次いでいる。開発が進んだことで人間の生活圏が広がり,ゾウと人間が居場所を奪い合うようになってしまったからだ。またゾウが畑を荒らしたり,ゴミをあさったりするようになったのには,手軽に栄養価の高い食べ物にありつけることに気づいたからということもできる。ゾウの糞の研究からは,人間の作物を食べているゾウは,人間に攻撃されるリスクからストレス値が高いのかと思いきや,その逆になることがわかっている。栄養価の高い作物を食べるメリットはゾウにとっても大きいのだ。

 

 かつてゴミの埋め立て地を見に行ったとき,ゴミが捨てられると同時に,カラスが何匹も群がる姿を見て,人間とカラスの関係を考えたことがあったのだが,ゾウもまたそうなっているのかと思うと違和感を覚える。

ナショナルジオグラフィック2023年5月号

 人間はアジアゾウを農耕や輸送,戦争から娯楽に至るまで様々な面で利用してきた。ガネーシャのように宗教的な象徴にもなった。本誌では,「共存とは,庭にゾウを入れることではありません」,「絶妙な距離を置くこと」だという考えのもと,新しい電気柵の開発と設置方法の工夫が紹介されていた。