ゴリラの社会科

授業で扱ったことをあげていきます。

犬が褒め言葉を理解できる理由,西アフリカ 見直される泥の建築

ナショナルジオグラフィック』2月号のレビューである。

 

1.犬が褒め言葉を理解できる理由

犬は褒めて伸ばす。

当たり前になったこの育て方だが,そもそもなぜ犬は褒め言葉を理解できるのだろうか。

 

人間の場合は

①大脳皮質下の聴覚領域――声の抑揚(感情)に反応する。

②聴覚野――言葉の意味を理解する。

という順番で言葉を理解している。

 

実は犬もこのプロセスであることがわかっている。

 

1万年にわたり,ヒトとともに進化してきたイヌは,言葉の理解プロセスのシンクロによって,われわれの最高のパートナーとなってきたようだ。

最高のパートナー?


2.西アフリカ 見直される泥の建築

 

顔に泥を塗る――名誉を傷つけたり,恥をかかせること

泥船に乗るようなもの――不安定な組織やものに頼っている様子

 

日本ではマイナスなイメージや使われ方をする「泥」だが,西アフリカでは伝統的な建築材料である。近年,現代的な課題に対する有効な建築材料として「泥」が見直されている。一方で伝統的な泥建築も,現代的な自然環境に対しては課題を抱えている。伝統的な泥建築か,近代的なコンクリート建築か,といった2項対立ではない新しい建築のあり方を特集している。

 

中学校社会科では,「(1) 世界各地の人々の生活と環境」のなかで,場所や人間と自然環境との相互依存関係に着目する。この相互依存関係とは,自然環境決定論に陥ることなく,人間社会の営みが自然環境に影響を与えていることを指す。これを可視化するのが伝統的な衣食住のあり方と,現代的な衣食住のありかたを比較することである。

 

左側を自然環境として右側を住居で図式化すると次のようになる。



西サハラに適していた泥建築

十分な厚みのある泥の壁は,多くの熱を吸収し,蓄積することができる。外気温が下がる夕刻になると,その熱が拡散される。

一方で泥建築は雨に弱いことと定期的なメンテナンスを必要とする。近年,気候変動の影響により,激しい雨期が見られるようになった。また近代化により伝統的な建築ではなく安価なコンクリート建築が好まれるようになったことで,泥建築の定期メンテナンスができるような地域コミュニティは解体し,泥建築は面倒で遅れたものになった。もはや泥建築だけでは,住居の安全性は確保されなくなってしまった。

 

〇近代的だが環境負荷が高いコンクリート建築

コンクリート建築の魅力はなんといっても「見た目の良さ」であり,安さであり,そして頑丈であることだ。そしてコンクリートは「都市」と親和性が高い。農村部の生活が解体され,人々が都市に流入する中で,生活様式が共同から個人主義的なものに移行する。無計画に都市が拡大するなかで,たくさんの建物需要を満たすだけの泥は都市にはない。

一方でコンクリート建築は温暖化の一因である。なんと全世界の二酸化炭素排出量の8%前後が,コンクリートの主要原料であるセメント製造に由来するという。またコンクリートは断熱性がなく,夏は暑く冬は寒い。そのため化石燃料を大量に消費するエアコンが必須装備となってくる。製造過程のみならずランニングコストという点から見てもコンクリート建築は二酸化炭素の排出に大きく拍車をかけることになるのだ。

 

〇丈夫さと泥のぬくもりを併せ持つ建築へ

本誌で印象的だったのは,現地の建築家フランシス・ケレの「単に建材の問題でないのを,私たちは学んできました。コンクリートが必ずしも悪いわけではないのです。問題はどう使うかです」という言葉だった。こうした問題ではしばしば泥かコンクリートかの二項対立に陥りがちである。そうではなく,両者の良い所を組み合わせた新しい建築モデルが必要となってくる。

下の写真はフランシス・ケレが設計した大学である。大きな土壁を基本構造として,外壁周りにはユーカリ材で日陰を作り出している。

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/23/011800029/?P=5

地理の授業のいい教材を見つけることができた。

amzn.to