ゴリラの社会科

授業で扱ったことをあげていきます。

観光の視点から組み立てるヨーロッパ州の授業

 

1.観光を主題にした単元構想

ヨーロッパ州の授業案を見ると,単元を貫く課題として,「EUのまとまり」に着目したものが多くみられる。

 

・「EUはどのような経緯でその構成国を変化させてきたのか」「EUの構成国内で,なぜ分離や独立などの動きがみられるのか」(平成29年告示『学習指導要領解説社会編』)

・10年後,EUはどのようになるのか予想しよう(川端裕介2019)

ヨーロッパ州では,国々の結び付きが強まることによって,地域にどのような影響が生じるのだろう(梅津,永田2023)

・ヨーロッパでは,なぜ国々の結びつきが強まったのだろうか(教育出版)

ヨーロッパ州では,なぜ,統合をめぐるさまざまな動きが見られるのだろうか(東京書籍)

などなど。

 

こうした課題はそれぞれ魅力的だと思うが,「EUのまとまり」が生活と結びつかない日本の中学生にとっては,はじめからEUの構成国の変化やその影響を追究することは難しい。

 

こうした状況に,ヨーロッパ州の観光を通じた人の移動を軸に単元を構想したのが金澤翔平(2020)だ。

金澤は,国連観光機関の統計資料を教材に,ヨーロッパ州の域内移動を浮かびあがらせ,EUによる国家間統合を捉えさせる授業を構想している。

 

2.教材作成

 金澤作成の教材を最新バージョンにしたものが下の表である。国連観光機関(UNWTO)の統計によれば,2018年,世界の国際観光客到着数14億1400万人のうち,51%はヨーロッパ州への観光客が占めている。そのうち,上位10か国と日本を表にまとめたのが下のスライドである。

 

このうち,1位のフランスを訪れた観光客の出発国を調べると,そのほとんどがヨーロッパ州の国々が占めている。ちなみに元データの画像はこんな感じだが,英語が全くできないのでこれでいいのか確証がつかめません。教えてください。

https://www.unwto.org/tourism-data/global-and-regional-tourism-performance


こうした資料から,生徒にはヨーロッパ州が世界で最も観光客が集まる州であること,ヨーロッパ州の国々間で観光客の移動が盛んに行われていることをつかんでほしい。

 

3.単元を貫く課題と単元計画

 金澤は「観光客が多いヨーロッパ州とはどのような州か知ろう」という学習課題を立て,全5時間の単元計画を立てている。せっかく観光への興味を高めてくれた生徒には申し訳ないが,教科書の流れと一致していないことから採用しない。私は単元を貫く課題を,川端(2019)と梅津・永田(2023)を組み合わせ,「10年後のヨーロッパ州では,国々の結び付きはどのように変わっているか予想しよう」とした。

 

1時 ヨーロッパ州の自然や文化について調べよう

2時 ヨーロッパ統合が進むことで,人々の生活はどのように変わったのか

3時 ヨーロッパの農業を地図で表そう

4時 ヨーロッパの工業はどのように発展したのか

5時 ヨーロッパで持続可能な社会づくりが進む理由を説明しよう

6時 ヨーロッパ諸国はロシアとどのように付き合っていけばよいのか

 

 

参考文献

金澤翔平,2020,「『地域を見る目』を育てるヨーロッパ州の授業」